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もし妻の存在に気付いていたのなら、彼は本気で悩み苦しんだのだ。
アンドリューの愛情を失うのではないかと、心細い思いをしていたのだろう。
どれほど一人で泣いたか分からない彼に、別れると言われてアンドリューは逆上した。
自分が愛しているのだからと、彼に否とは言わせなかった。
あれは愛情でもなんでもない。
ただの傲慢で歪んだ欲望だ。
「別に、他の人がいてもいいんだ。あんたが毎週会いに来てくれるなら。僕を大切にしてくれて、誰よりも愛してるって言ってくれるなら。
僕は、不安で不安で眠れない夜もある。怖くて一歩も外に出られない日もある。あんたのことを考えると、胸が苦しくなって泣いたりすることもある。でもあんたと一緒にいるときだけは、すごく安心する。だってあんたは、絶対に僕を傷つけない」
「レオ…」
「ただときどき、あんたの奥さんはいいなぁって思うよ。いつでもあんたに愛してもらえて…」
寂しげに微笑む彼を、強く抱きしめた。
健気な彼が愛おしかった。
「愛している。俺にはお前だけだ」
妻はもう抱くことができなかった。他の誰かを欲しいと思ったこともない。
「お前だけだ、レオ」
彼が欲しくて、理性が崩壊した。週末に帰らないことがどういうことか、妻がそれをどう思うか、何も考えられなくなった。
「あんたが好きだ…。最初に会ったときからずっと…」
頬を上気させて、レオナードが言った。
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