§アル・フィーネ

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「でも最初に会ったとき、お前はまともに口を利いてくれなかった」  アンドリューがそう言うと、レオナードは照れたように笑った。 「あのときはね、あんたが僕を追いかけて来たと思ったんだ。僕に一目惚れしたのかな、どこに誘われるんだろう、ってドキドキしたのに、駅まで送るなんて言われてがっかりした」  会ったばかりで、アンドリューに恋愛感情はなかった。彼にそんなに好かれていたことも知らなかった。 「次の日のランチだって、冷淡な態度だったじゃないか」 「あれは緊張して、何も食べられなくなっちゃったんだ。わざわざ僕に会いに来てくれたあんたに、どんな顔をすればいいのかわからなかった。そのあとホテルに誘われて、僕は胃が痛くなるほど緊張したのに、あんたは僕を抱いてくれなかった」  レオナードが可愛らしい唇を尖らせた。 「でも、いきなりだったから、何か都合が悪いのかなって思った。それからあんたが旅行に誘ってくれて、今度こそはって期待した。なのにやっぱり、別荘で二人きりになっても、あんたは僕を抱かなかった」  アンドリューも笑った。  ここまで気持ちがすれ違えばもう笑い話だ。 「だからあんなに怒ったんだな。えらい剣幕で、別の相手を探すって脅された。そこまで言われたら、俺も腹をくくるしかなかった」 「でも、誰かにあんなことを言ったのは初めてだよ。あんただけだ…」  しなやかな長い腕が、アンドリューの背中に回された。
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