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この勝負は、本当に降りられないのだろうか。
舞台上の彼を見ながら、アンドリューの心は揺れた。
今まで通りの生活を続けることに、どれほどの価値があるのだろうか。
すべてを捨てることで彼と引き換えにできるなら、そのほうが最良の選択なのではないだろうか。
彼と彼の人生に対して、言いようのない重い責任を感じている。
彼が信頼を寄せて、アンドリューを頼ってくるからだ。
誰かに頼られ、必要とされるとき、アンドリューはこの上もない喜びを感じる。
自分が生きている意義を感じる。
愛情を注ぐことで誰かを生かし、美しく咲かせられるなら、いくらでも労を惜しまず働くことができる。
彼の幸せがそのまま、アンドリューの喜びとなる。
彼の人生を背負って生きていきたい。
自分の腕の中で、彼を幸せにしたい。
もう彼と離れて生きることはできなかった。
「帰らないの?」
本番を終えて、部屋に戻ったのは深夜だった。レオナードはまだ興奮が冷めやらない瞳を、キラキラと輝かせている。
「もう、いいんだ」
言葉の意味を測りかねるように、レオナードが首を傾げた。
「このあいだお前は、どうして自分を置いて帰るのかと聞いたね。お前の言うとおりだ。俺の帰る場所はここしかないのに、何故俺は、お前から離れようとしたんだろう」
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