§アル・フィーネ

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「目を覚ませ、アンドリュー。色恋沙汰は一時の感情だ。今は恋に溺れていても、いつかきっと冷静になれるときがくる。本当に大事なものは何なのか、それが分かったときに君は後悔するだろう。たとえ夫婦のあいだに不満があったとしても、しばらく我慢して頭を冷やすんだ。君が出て行っても、絶対にいい結果にはならない。小アンドリューは君を恨むだろう」  アンドリューはため息をついた。 「両親にも、俺が出て行くことはないと言われた。子供を置いてリズに出て行ってもらい、別の人を迎えられないものかと。でも、彼をここへ呼ぶことはできないし、何の落ち度もないリズが出て行く必要はない。家は子供に譲るから、二人で仲よく暮らしてほしい」  ロバートが黙った。アンドリューの決断を、まだ受け止めかねているようだった。  それ以来アンドリューは、家に帰っていない。  引っ越し先のアパルトマンは、レオナードの父親が所有する不動産だった。将来的に分与される財産なので、家賃は払っていない。  全く後悔がないわけではなかった。  ロバートに言われるまでもなく、成長した息子は父親を恨むだろう。自分は捨てられたと思うかもしれない。  大人しい母親に対して感じるのは同情か、反発か。  祖父母や叔父叔母に囲まれて、片親のハンディが少なくなることを願うしかない。
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