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アンティークドールのような美貌を間近に見て、そこに後悔や反省の色がないかと、アンドリューは必死に探し回った。
だが拗ねたような口元は閉じたままで、その美しい顔には、不機嫌なパートナーに対する失望がありありと浮かんでいるだけだった。
「あいつと寝たのか、レオナード?」
絶望のせいで、声がかすれた。
これだけ決定的な場面に出くわしても、アンドリューはまだ心のどこかで、恋人の潔白を信じている。
何かの間違いではないかと思う自分自身が不思議で、救いようもなく哀れだった。
「どうでもいいだろ、そんなこと」
彼の冷ややかな答えに、一瞬目の前が暗くなった。
彼は襟をつかまれたまま顔を上げ、体格の違うアンドリューを昂然と見返している。
「どうでもいいことはない。ここは俺たちの寝室だ」
彼はアンドリューの手を振り払うと、癇性な子供のように叫んだ。
「ここは僕のうちで、ここは僕の部屋だ! 文句があるならあんたが出てけば?」
一体いつから、自分たちはこうなってしまったのだろう。
アンドリューは、ワインを飲みながら深いため息をついた。
他愛のない喧嘩なら、数えきれないほどした。たいてい部屋を出て行くのはアンドリューで、行き先は近所のビストロだ。こうして一人でため息をつくのも、いつものことだった。
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