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ジリジリとこちらに距離を詰めてくるマキノの笑顔が憎たらしい。彼奴、イベント事だと普段の五割増でイキイキしてるんだよな。
「保泉ちゃ〜ん、早いとこ捕まった方が楽なんじゃないのぉ」
「…」
マキノがねっとりとした声で誘惑してくる。
確かに仰る通りですけど、体育の成績とか風紀副委員長の威厳とかありますし…景品は要らないですけどぉ…
心中独りごちていれば、チセが段々と接近してくる鬼に焦りを感じたのか、繋いだ手に力が入るのを感じた。
横を見れば強ばった表情。
あ、
「チセ、どうしたい?」
突然の丸投げにチセが「は!?!」と叫んだ。ごめんて。
ここでチセを引き摺りながらマキノに撃たれれば終わる話なんだけど、イベント初参加でワクワクしていた可愛い後輩を無碍にするほど…
「んなの決まってるだろ、逃げる!!!」
落ちぶれたくない!
「よしきた!!!」
チセと繋いだ手にぎゅっと力を込めて、木陰から勢い良く飛び出す。
そして"あれ"をマキノに投げつけた。
ポン!
バケモノみたいな反射神経で銃を構えたマキノだったが、無駄撃ちに終わる。
「何これ保泉ちゃん!?ちょっとずるいよぉ!」
「ふはは己マキノ!引っ掛かる方が悪いんだよ!」
必殺、そこら辺の雑草とツタを編み編みしたお手製ネット!
チセと俺がどんだけ窮屈な思いしてたかをマキノに八つ当たりした。ツタにいい感じに絡まった彼奴の悲鳴が気持ち良い…。
「透なにニヤニヤしてるんだ!?逃げないとだろ!!」
「あっごめんチセ、レッツゴー!愛の逃避行じゃい!」
今のうちにとチセと猛ダッシュでその場を離れた。
鬼ごっこももう中盤なのか、目につく生徒の数もだいぶ減っている。
ハンターな風貌をした生徒を避けながら危なげなく校舎内に逃げ込んだ。全力疾走で何階分かの階段を駆け上がって、誰も居なさそうな教室に身を潜める。
「はぁー、疲れた…!」
流石に天下の狂犬と呼ばれる俺でも疲れますとも。
乱れた呼吸を落ち着かせながらチセの様子を窺うと、案外けろっとした顔をしていた。
ちょっとまってチセの方が体力あんの?あんな空気抵抗やばそうなでかいアフロしてんのに?ショックなんだけど。
「楽しいな、レクリエーション!」
疲れとはなんのことやらという様子で、チセはパッと笑顔を見せる。よかったよかった。
そんなチセの後ろから伸びてくる 手 が
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