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▹風紀の狂犬(笑)
『保泉、5階ICTルームの準備室だ。粛清対象は3年生大柄武道未経験者部活・親衛隊共に無所属。お前一人でも行けるな?よし、健闘を祈る。』
ブチッ、…ツー、ツー、
通話時間10秒。留守電でもないのに一方的。
相変わらずシンプル且つスピーディ且つ電話越しの圧力だけで有無を言わさず仕事を投げるその姿勢、そこにシビれる憧れるぅ!
せめて通話越しに事の顛末を聞き届けてくれるなりすればいいのに、その無慈悲な態度がこう…癖になる。
と言う俺の委員長に対する尊敬の念とかは今は置いておいて、いっちょお仕事に参ります。
風紀委員のすべき事は一つ、粛清執行、取り締まり!
今日も俺、がんばっちゃうぞっ!
「風紀粛清出前一丁入りぁした!!」
引き戸を引いた筈なのに扉が向こう側に倒れた。
ちょっと力込めすぎちゃったかもだけど、弱い扉が悪いよね。
薄暗いICTルームの準備室。予備のパソコンやケーブル等の精密機器が保管されている中、強姦未遂現場発見。中途半端にズボンを下ろして股間を晒す加害者と、ケーブルでデスクに縫い止められた被害者。
ちなみにどちらも男。今は置いておく。つーか大切な備品をえらい事に使ってくれてんな。
加害者の男はこちらを見てヒュッと背筋を伸ばす。顔が見る見る青くなっていく。
化け物でも見たような顔。
「お、お前、風紀のっ…!」
そうです、俺が風紀です。何驚いてんだか。
「ICTルームってぇ〜、電子機器いっぱいあって超繊細に扱わないとなんだよ?知ってるセンパイ?そんなとこに風紀委員呼んじゃダメだよ〜!粛清中に備品壊しちゃうでしょぉもぉ〜!」
こちらが一歩進むだけでデカい図体はビクリと震えて足をもつらせ、ずり落ちたズボンに絡まり床に倒れ伏した。感度良好かよ。
男は両腕を振り上げ、抵抗の意思を見せる。
「く、来るな!まだ、未遂だろ!!この通り投降するから、こっちに来んなっ!」
「えっそれ命乞い?やる気あんの?風紀様にお願い事する時は、手を組んで頭の中で三回繰り返すんだぞ!」
「なんなんだよお前は!!」
うんうん、怖いよね。会話のキャッチボールできないと怖いよね。怖くするためにやってんだけどな。
縮み上がった股間を鼻で笑いつつ、腕を振り上げ近寄るなと抵抗する男を蹴り飛ばす。
え?あ、ウソウソ、蹴ってないよ!脚出したらあっちが腕ぶつけてきただけ!
いてぇ、と藻掻く男が、こんな惨めな男が、痛み程度で更生されるとは思っていない。
でもこういう脳みそつるりんなアホンダラ相手に一番わかりやすい罰が『身体的苦痛』なのだ。
下腹部を強かに踏みつけるが、力の入らない腕では抵抗する術もないようで、声にならない呻き声が小さな準備室に響く。あ、ちょっと泣いてる?
「て事で、Uber風紀だよ。代金貰っていい?」
男の視線が訴えてくる。何を言いたいのか、と。
「お前のタマを!!お代として頂戴致しま〜す!!あ!安心しろよ、代"金"ってことで、もぎ取るのは魂じゃない方のタマだから。」
「〜〜〜〜ッ!!」
言葉の真意を悟り恐怖に耐えきれなかったのか、男の目が段々と虚ろになる。何気ぃ飛ばそうとしてんだか。追い討ちを掛けたいのも山々だが、廊下が騒がしくなってきた。恐らく委員長が他の風紀を寄越したのだろう。
「じゃあお前、次起きた時はオンナノコだから。この学園でも強く生きろ、よっと!」
俺のパワフルな踵落としが下腹部ではなくおぉーっと!剥き出しの股間にクリーンヒット!これは汚いーー!!
声も出さずに失神した男を見下ろす。願わくば退学とかになってくんねえかな。ならないだろうけど。
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