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▹新歓後日の後日談
休み明け。それは新歓の景品であるデートの組み分けが発表される日。
昼休みになると掲示板には人がこれでもかと言うほど集まり、悲鳴と歓声の織り成すハーモニーで阿鼻地獄を形成していた。
「人がゴミだな」
「せめてゴミのようだ、って言ってくださいよ。保泉先輩は見に行かないんですか?」
俺は風紀委員室から高みの見物。
元々昼休みを過ごすような場所ではない風紀委員室には俺と鵜飼の姿しか無かった。
新歓後の発表は基本昼休みに貼り出される。
新歓で最後まで逃げ切った俺も掲示板に指名云々が掲載されているだろうから、無縁な話ではない。
俺的には、鵜飼がなんで下に居ないのか気になるんだけど。
「俺今朝委員長から組み分け聞いたし」
「これだから副委員長は!」
「俺としてはなんで鵜飼が風紀委員室に居るのか知りたいんだけど」
「もっと可愛くお願いします」
「べ…別に、教えて欲しいなんて思ってないし…!」
「貼り出された内容は腐男子コミュニティで即拡散されるので。それに上からの方が見れるものが多くて…ひひ…」
全くこの腐男子は。
下々の民を見下ろすと、何故か見つめ合いながら顔を赤らめる男達やら、公衆の面前でキスをかます男達やら、掲示内容を見て面食らっている男を見てニヤつく男やら、多種多様な男達が居た。
全員男なんだよなぁ…当たり前だけど…
それよりも!と鵜飼が唐突に距離を詰めてくる。
「なんですか保泉先輩のあの組み分けは!不正しましたか!?」
「や、元から景品取れたらこうしようとは話し合ってたよ。運良く全員景品取れたから…ネッ!」
俺が景品としてデート相手に指名したのは日向桔梗、彼奴である。
そんでもって桔梗が指名したのは雅楽川マキノ、そしてマキノが指名したのは俺!
つまりただのいつメン。
知らん生徒とデートするより良いよねというトップ10としてのサービス精神が欠落した外道な策である。
「全くけしからん保泉先輩ですよ!風紀としては見過ごせませんが腐男子としては見過ごします」
「ありがとう」
掲示板の方から「三角関係!??」「3P!?!?」とかいうクソデカ悲鳴が聞こえた気がしたけど、断じて違うよ。
学園のピンクな雰囲気に毒されたのか、完全に腐男子モードに入った鵜飼がメモ帳片手にウインクを乱発してくる。
「ところでいつどこでデートするんですか?僕に教えてください」
「もっと可愛く」
「鵜飼知りた〜い!ぶりぶり!」
「おえぇ、どこにも出掛けないよ。多分誰かの部屋じゃない?」
「!?!やっぱ3Pじゃないですか!!」
「どつくぞ」
キンキンと耳を劈くでかい声。
下からも横からも満遍なくそんな単語聞かせないで欲しい。
「日付なんて知ってどうすんの?」
「リアルタイムで御三方が集まってる事実に興奮します。元気が出ます。僕、風紀活動頑張れちゃいます」
「そりゃ教えるしかないな」
鵜飼のあまりに真っ直ぐな瞳に苦笑する。
腐男子の生態に謎が深まるばかりだ。
「6月6日だよ」
「…ああ!」
納得の声を上げた鵜飼は「ほんとに仲良しなんですね」と大きな目を丸くして驚いていた。
ま、気心の知れた奴等ですから。
6月6日は、雅楽川マキノの誕生日である。
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