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▹いつメン水入らずの梅雨
来たる6月6日。
それは千歳屋学園生徒会会計の誕生日である。
特別寮に向かってテーマパークもかくやというレベルで伸びる長蛇の列に朝から笑いが止まらなかった。
高みの見物をしつつ、午前のうちから桔梗と連れ立ってマキノの部屋に向かう。
「マーキノくん、お誕生日おめでとーーーう!」
「保泉ちゃんに日向ちゃん、いらっしゃーい!」
___パァン!
マキノの部屋のインターホンを押して、飛び出してきたマキノに不意打ちクラッカーをかます。
喜び混じりに驚いたマキノが、新歓でも同じようなことしたじゃん〜!とはにかんだ。
マキノは普段からいけ好かないくらいキラキラしてるけど、今日のマキノはいつもの何割増だというくらい目が輝いていた。
「こっちこっち!」
と手を引かれ、部屋にお邪魔する。
革張りのソファとかヴィンテージ感溢れる家具とか、全体的にシックにまとまった大人っぽい部屋だ。
圧倒的顔良男のマキノが浮くことなくこの装飾に馴染んでいるのが鼻につく。
今日はこの部屋を浮かれぽんち仕様に大改造していきたいと思う。
「すんごい大荷物だねぇ、プレゼント?」
「いやほとんど飾り付け用」
「オレに無許可で〜!?!いいよ〜!!」
桔梗くんは早々にキッチンに向かいました。料理となれば、桔梗に敵う者はここにはいるまい。
けらけらと笑うマキノに本日の主役タスキを掛け、お天気なバースデーハットも被せる。
全身から『誕生日楽しみにしてました!』感が出ていい感じだ。マキノと顔を見合せて更に笑った。
「そういえば外に握手会みたいな列出来てたけど今年はファンサしに行かないの?お前のコネコチャン達でしょあれ」
トップ10の誕生日にはいつもこうやって特別寮にプレゼントを渡す目的で一般生徒が長蛇の列を作る。そして守衛さんが危険物がないかチェックした後、俺達の手元に回ってくるシステムだ。
どっかの事務所のアイドルなのかな。
「んー、今年は保泉ちゃん達とずっと居たいからなぁ…」
「え…マキノって、俺と桔梗のこと好き過ぎ…!?」
「泣いて喜んでいいよぉ」
部屋に好き勝手バルーンを飾り付けている片手間に、背中にぴったりとくっついて離れないマキノの話し相手を務める。
基本的にマキノは男ったらしで節操なしだけど、性欲よりも俺達との友情を優先している。気がする。
「それに誕生日は部屋にネコちゃん呼ばないって決めてるんだぁ、なんか特別みたいになっちゃうでしょ?」
想いを寄せてくる生徒を弄んでその気にさせておきながら、本気にしないでね〜というスタンス。
恋バナをする乙女みたいに眦を下げてふんわり笑うマキノは、やっぱりクズだった。
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