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特殊な環境下とは言え俺達は成長期の男子高校生。
見た時は正直余るかと思った大量の料理も綺麗に平らげることができた。残ったら残ったで桔梗は丁寧に保存してくれるけど、食卓でお皿が綺麗になった時しか感じられない喜びってあるよね。まあ俺はそんな献身的に誰かに飯を作ったりはしないけど。
食器の片付けも終え、リビングにある大画面のテレビでマリアカート8DXをして画面酔いしたり、ヘリウムガスを吸って会長のモノマネをして爆笑したり、ふざけあっている内にあっという間に時間は過ぎていった。
「ひぃ、ひ…ほんと…保泉ちゃん、会長の真似うますぎ…」
「次これ、『前髪をカッコ良さげに掻きあげたものの落ち着かなくてちょいちょい前髪を戻す会長』」
「あーっははははは!!!!」
部屋には俺とマキノの笑い声がずっと響いていた。
桔梗は大口開けて笑うような性格ではないけど、時折頷いたり笑いを堪えるように一時停止したり、雰囲気だけでも楽しんでいる事は感じ取れた。
というかもう笑いすぎてしんどい。
「はー…俺腹筋50個に割れたかも」
「お腹ボコボコの保泉ちゃんやだぁ」
一度笑いのツボに入ったら何聞いても笑えて来ちゃうタイプの人間だからもう大変だった。
フローリングの床に転がり火照った身体を冷やそうとしたところで椅子の下に隠しておいた箱が目につき、あ、と思い手を伸ばす。
「そうだった、誕プレ誕プレ」
「今ぁ?見たい見たい、何くれるの〜?」
ラッピングされた包みを差し出すと、マキノは笑い疲れて紅潮した頬を更に緩めて微笑んでいた。
丁寧に包装紙を開き、箱に手をかける。
中身を見たマキノの反応はやっぱり想像通りだった。
「はははは!!!嘘でしょ保泉ちゃん!!」
「お前…」
桔梗にはやっぱりドン引きされた。
綺麗に箱に納められているのは、男物の『貞操帯』である。要するに施錠機能つきの鉄壁下着。
まあ本当の誕プレは別にあるけど、風紀としてのプレゼントはこれが正答だろ!
「マキノには身体大切にしてほしいから、さ…」
「えーっ、保泉ちゃんがオレの貞操管理してくれるってことぉ?なんかえっちじゃん」
そしてなんでコイツは乗り気なんだ。
本気で貞操帯プレゼントした狂気の男になる前に、貞操帯を取り出して箱の底に隠してあった本命のプレゼントをマキノの手に乗せた。
中身は指輪?などとほざくマキノの頭を小突き、さっさと小箱を開けさせる。
中を確認したマキノが喜び混じりに驚きの声を上げた。
「ピアスだ〜〜!!」
シンプルな金のフープピアス。
マキノはオシャレ好きだからこんな物でも良いのかとこれでもかなり迷ったのだ。
でも反応を見る限りそれも杞憂だったよう。
「ありがと〜保泉ちゃん!」
遠慮なく抱きついてきたマキノの背中を抵抗の意を込めてバシバシと叩く。
肩に顎を乗せたマキノがさりげなく俺の髪束を掬い、そこにキスを落とす様を横目に見て、やっぱりなと思った。
金のアクセサリーにしようと思ったのは、マキノは会計だから金運が上がるとイイネ〜って意味がひとつ。
もうひとつは、
「も〜〜〜マキノほんとに金髪好きだよな、性癖ってやつ?」
ぴたりと、奴の動きが停止した。
「……ちょいマキノさん?」
「…」
黙り込んだマキノの顔を傍観していた桔梗が好奇心か覗きこみ、遠慮なく放った「真っ赤だな」という言葉に耳を疑った。
「もしかして照れてんのお前」
「顔見ないでえっち」
肩にごりっと顔を押し付けられ「ぐえっ」とみっともない声が出た。いつもの間延びした声色は何処へやら、早口で拒絶してきたマキノの耳は横目でもハッキリわかるほど真っ赤に染まっていて。
「…はっ、ははははは!!!!」
それを見た俺はもう笑わずにはいられなかった。
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