▹いつメン水入らずの梅雨

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その後、鵜飼からの電話で無事平くんを保護した旨の報告を受けた。 どうやら鵜飼が職員室に呼び出された隙に平くんは拉致されていたらしい。狼谷の元に向かう前、鵜飼に『平くん引き取りに来れる?』と電話した際、鵜飼は心底安心したのかでかい溜め息を吐いていた。 『狼谷の呼び出しは大丈夫でしたか?』 「軽くキュッとしておいたよ」 『へへっいい気味だ!』 散々苦労させられたのか、普段なら顔の良い男を甚振(いたぶ)るなんて!とわざとらしく嘆くような鵜飼が盛大な笑い声をあげていた。 『狼谷ってどれくらいの処罰になるんですか?』 「んー…まあ暴力行為はしてないらしいから、停学まではいかないと思う。実は手を出してたとかだったら話は別だけど」 『ううむ…まあそんなもんですか』 せいぜい反省文ってとこだろうか。 鵜飼は不承不承といった様子でそれに相槌を打った。 残念ながら、そんなもんなのだ。 「ま、狼谷が平くんに謝りに来る気配なかったらまた連絡して!そしたら首輪つけて引き摺ってくから」 『ええ!?そんなサービス…!?』 「喜ぶんじゃない」 反省文の枚数も態度によっては数が変わってくるだろう。 恐らく狼谷は、自分がこの学園で『食う側』の人間だと慢心していた。でも実際のところそうやって油断している一年生が一番食われやすかったりする。 タチ喰いの先輩とかが居るもんでね。 これで少しは心折れて己を見つめ直してくれるといいんだけど。 「…もういいだろ、電話」 「はーい」 長電話になってしまっていたのか、桔梗さんからお言葉を貰ってしまった。 そろそろ切るわと電話越しの鵜飼に伝える。 『えっちょっ今の声、日向先輩ですか?なんでこの時間に一緒なんですか?イベント進行中なんて聞いてませんよけしからん!もしかして日向先輩の腕の中で慰めてもら』 電話を切った。 残念ながら鵜飼の想像するようなやらしい事はないし、手作り弁当というド健全なアイテムで慰めは足りているのだ。 だしのきいた卵焼きを頬張る。美味い。 俺の噂に関しては、十中八九腐男子の妄言を悪意ある生徒が広めたものだと思われる。 腐男子的には俺とチセがラブフォーエバーする絵面を期待しているらしい。その噂が広まれば、チセに恋心を向ける生徒や俺に恨みのある生徒が、一斉に攻撃を始める。そう思った誰かが広めた。 というのが俺と委員長が考えた推測のひとつ。 腐男子達だけが広めた噂なら、わざわざ『風紀の狂犬は腑抜けた』等と悪意マシマシの状態で広まる訳がないからだ。 狼谷がその噂にホイホイされて喧嘩売ってきたのかはわからないけど、その事についても後日聞く必要がありそう。
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