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▹獅子奮迅の体育祭!
「もうすぐ体育祭があるじゃないですか」
「そうっすねぇ」
なんて事ない平日の放課後、俺は麗しの副会長とまたもや茶をシバいていた。
今日も今日とて風紀の業務はあるのだが、否応なしに優雅に拉致してくるのがこの人である。ちょうど生徒会室に向かうところだったからいいけど。
…そもそも副会長のお誘い断れるわけないよね!
体育祭の単語を聞いて思い出すのは昨年の大乱闘だろうか。行事には確定で一波乱起きるため、今年も覚悟しておいたほうがよさそう。
反射で滅茶苦茶渋い顔をしてしまった俺に副会長がくすっと笑う。
「なのでまた御子柴から逃げてきてしまいました」
「へっ!会長なんて怒らせておけばいいんですよ!あんな真っ赤な髪して、顔も真っ赤にしたらさぞ面白いでしょうね!」
「ええ、もしそうなっていたら後で写真を撮ってみましょう…」
俺は結構のびのび動いている自覚があるけど、副会長も大概自由人だと思う。
この学園で一番生徒会長を振り回してる人なんじゃないか?
そんなお茶目な一面もある副会長の、ティーカップを傾けながら長い睫毛を伏せる楚々とした姿に食堂にいた生徒のほとんどが視線を奪われていた。
ふふん、綺麗だろ。
副会長が、それで、と話を区切る。
「生徒会室で険しい顔をするのは御子柴一人で足りていたのですが…」
「何か問題でも?」
「はい…保泉くんにも、風紀にも相談したい事がありまして。」
悩ましい表情をする副会長の相談したい事には、少し思い当たる節があった。
「庶務の小鳥遊についてです」
千歳屋学園生徒会には庶務が二人居る。
全く同じ容姿、全く同じ声、全く同じ仕草をするシンメトリの双子。
それが小鳥遊 小雪と小春の二人だった。
小鳥遊双子は同級生だ。その為少なからず交流はあったが、今年は双子がAクラスに移動した事により距離が空いてしまっていた。
だから余計動向が掴めなかったというのもあるが。
双子の弟である小春が渦中の人であるチセと接触した、と風紀で報告があがったのはつい先日の事だった。
…大層気に入っているそうだとも。
実は今日もその話について聞き込みをするため生徒会室に向かっていたところだった。
「統治する側であるはずの生徒会が行事前に揉め事を起こすなんて嘆かわしい事ですが…」
「転校生関連なら一応風紀の管轄ですから、遠慮せず相談してください!それに副会長には良いとこ見せたいんで~!」
「ふふ…助かります。では、保泉くんには小雪とお話をしてもらいたいのです」
「…小雪とですか?」
兄の小雪はまったく転校生には見向きもしなかったそうだけど…とりあえず副会長の頼みならそうするしかあるまい。
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