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「なんで透が…あ、風紀の用事?」
「まあそれもなくはないけど。今回は小雪くんのお話し相手に推薦されたただの保泉で~す!」
「僕の話し相手?」
終始きょとんとした顔の小雪の目元には微かに涙の跡が見えた。それだけでもなんとなく小春と諍いがあった事は察せるけど、喧嘩しただけかーと軽く捉えるにはこの双子はなんというか、複雑なのだ。
「生徒会の業務は心配しないでいいって副会長も言ってたし、久々に顔合わせたんだからゆっくり語らおうぜ」
「そう、副会長が…」
「それで何のお話する?俺の友人が金髪フェチだった話とか?」
「えっ!?小春の話聞きに来たんじゃないの!?」
名前を伏せて思いっきりマキノの話をしようとしたら、小雪が素っ頓狂な声を上げた。
それは聞きたいけど、急いては事を仕損じるって言うじゃないですか。
それに小雪も小春も…まあ、友人なので。
傷心中に傷を抉るような真似はしたくない。
「業務より友達を優先したって罰当たらないでしょ」
…こんな事マキノとか桔梗には言えないけど。
素直で可愛い小雪になら、俺も素直に言葉が出た。
「透…」
「おおぉまじか」
一体何がそんなに涙腺を刺激してしまったのかはわからないが、ぼろぼろと泣き出す小雪に既視感。なんだか最近よく泣き顔を目撃してしまう。少しバツが悪い気分になった。
ハンカチをさっと取り出せるようなスマートな男にはなれないもので、カーディガンの袖で小雪の涙をそっと拭う。
「透の服汚れちゃう…」
「いいよそんくらい、服のど真ん中が濡れたって怒りやしないよ」
大抵洗うのは桔梗ですとか言えないよね。
でも元々服の一枚でギャーギャー言うほど俺は薄情ではないので…
盛大に両手を広げてカッコつけたら小雪が飛び込んできて、言っといてなんだけどびっくりした。
元々小鳥遊双子は甘えるのがうまいところがあったけど、これは甘えるというか弱っているというか。
「んで、金髪フェチ野郎の話なんだけど」
「続けるんだ…」
小さな背中をぽんぽん叩く。
しゃくりあげる声が止むまで、俺はどうでもいい雑談を一人語り続けた。
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