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出立(二)
「はあ……そういうものですか」
「そういうもんだ。返すなんて言うなよ」
そんなやり取りをしているうちに、葛と狐たちが見送りに出てきてくれた。
それに気づいて、二人は皆に挨拶する。
「……それじゃあ、葛、元気でな」
「葛のこと、よろしくお願いします」
狐たちが、任せておけと胸を叩いた。
見れば葛の周りには、本当の子狐らが集まってじゃれている。依然、表情の乏しい幼子は、それでも今、賑やかな輪の中にいるのだ。
その光景に微笑んだ師弟は、目を見交わせて里を後にした。
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