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目的の地で(五)
「……なるほどね。そういうことなら、安心して良いよ」
「ああ。我らは、坊を歓迎するぞ」
事情を聞いても、彼らが特段憤ることはない。他人他妖とは得てして身勝手なものだと、割り切っているからだ。
口々に返ってきた言葉に、晴道も玉瀬も頭を下げた。
ただし、当の葛は黄金の目を瞬くばかり。どうにも気持ちが読みづらい。
玉瀬は屈んで目線を合わせた。
「葛。初めての場所で、不安かもしれないけど。お前には長い時間がある。きっと、ゆっくり慣れていけるよ」
終の住み処になるか否かは分からない。ただ、今の葛には安心して身を置ける場所が必要なのだ。
ここで玉瀬は、狐たちの中に小さな姿を見つけた。葛とあまり変わらぬ少女である。
「あ、ほら! あの子なんか、仲良くなれそうじゃないか」
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