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目的の地で(六)
玉瀬の言葉に、しかし、師はなぜか苦笑いだ。
「あのな、彼女は……」
晴道が言い終わる前に、少女が近くにやってきた。
「なんじゃ。わしと戯れたいのかえ?」
「んんっ?」
彼女の第一声に、玉瀬はぎょっと目を剥いた。声も姿も少女のそれだが、言葉に若さは微塵もない。
「その人は、里の中でも相当な古参なんだ……いくらなんでも、紛らわしいとは思うが」
俺も初めは騙されたと、晴道が嘆息した。老少女は、心外だとばかりに鼻を鳴らす。
「皆、好きな姿をとっておる。わしは、この見目が気に入ってるだけじゃ」
ここで一旦言葉を切り、彼女は葛に笑いかけた。
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