一仕事(三)

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一仕事(三)

「じゃあ、まずは、竹箒なんてどうですか?」  狐たちが、わっと沸く。早く作ってみせてくれと、楽しそうにせがんだ。 (……え、箒だよね? こんなにはしゃぐほど?)  玉瀬が解せぬうちに、晴道はせっせと竹を切り、竹枝をまとめていく。葛も里の狐たちも、夢中で見守っている。そして、それが箒の形になると、手を打って喜んだ。  出来上がった物を彼らに渡して、晴道は一旦、こちらに近寄ってきた。 「はは、驚いてるな」  笑って言われ、頷きを返す。  晴道は言葉を継いだ。 「知らないことには胸が高鳴る。それだけの話さ。狐は、葉っぱなんかを化かすだろう? 便利な力だし、普段はそれでまかなえることも多い。ただし反対に、何かを一から作るっていうのは、人間よりも慣れてないんだ。だから、物珍しくて、喜んでくれるんだよ。化かした物より長持ちするしな」 「なるほど」
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