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旅路
狐の隠れ里に辿り着いた頃には、玉瀬はすっかりへばっていた。
幼い葛を伴って、里を目指すこと十数日――そのほとんどは街道を進めば良かったので、旅慣れた少年には苦ではなかった。
葛も相変わらず黙したままだが、体力は並みではない。従って、大方を自力で歩いてくれる。さらに、道筋は晴道が正確に覚えており、迷うことなく進んでこられた。
では、なぜ、三十を過ぎた師匠でも、初めて旅した幼子でもなく、元気盛りの玉瀬一人が参っているのか。
簡単に言えば、里へ入るための洗礼を受けたためだった。
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