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こんな世界なんて糞喰らえだ。
会話にもならない自分勝手な家族も、見栄ばっかり張って優越感に浸りたいだけの友達も、どんなに頑張っても評価されず、無能なやつばかり出世する職場ももううんざりだ。
そしてそんな世界で無力な自分でさえも。
誰も彼もが敵に思えて何者も信じられず全部に嫌気がさして「滅びてしまえ!」と本気で思っていた。
別に何か決定的な出来事があったわけではない。
小さな積み重ねのストレスが溜まり溜まって暴れたい衝動に駆られるのを理性で必死に抑えつけてきたのだ。だけどそれももう限界。
このままではいつか壊れてしまうと思った。
鬱屈とした毎日の中でオレの精神はギリギリの崖っぷちに立たされていた。
―全てを捨てて誰も知らないところに行きたい。
オレ、實村いつき(さねむらいつき)はある日衝動のままにふらりと都会を飛び出し、列車に飛び乗った。
必要最低限の荷物を持って誰も知らないところへ行きたかった。
行き先なんて決まっていない。
ただただ着の身着のままに列車に揺られ、どんどんと山奥へと向かっていく。
目の前に広がる雄大な自然。
何かに誘われるようにオレは誰もいない無人駅で列車を降りた。
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