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≪奴らが集結したら厄介なことになる。その前になんとかせねば。そうだ、夜叉丸。夜叉丸はいるかー!!≫
大天狗が声を上げると彼の前に少年が一人、跪いた。
一見は人間のような見た目だが立派な妖怪で、本来は関東にいる滝夜叉姫という妖術使いの配下だが連絡役として大天狗の元に仕えているのだ。
≪お呼びでしょうか、大天狗様≫
≪夜叉丸、東国にいる滝夜叉に協力を頼みたい≫
≪大天狗様の音からになれるのなら主人も喜びます。なんなりと≫
≪ワシは今、頼光の監視のため京から動けぬ。そこでワシの代わりに滝夜叉に頼光四天王を討ってほしいのだ。できるだけ奴らの力を削いでほしい≫
≪畏まりました。すぐにお伝えします≫
そういって夜叉丸は鞍馬山を飛び出し、滝夜叉姫へ大天狗の意志を伝えた。
≪ご苦労、夜叉丸。お父上の頼みでは断るわけにはいきませんね?≫
滝夜叉姫はそういって妖艶な笑みを浮かべた。
*
群馬県碓氷峠―
長野へと続く曲がりくねった山道をただひたすらに歩く精悍な顔つきの青年が1人。
身長ほどもある木槍を背負い、着物袴に武具を身に纏っている。
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