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するとうようよと彼の周りを取り囲んでいた妖怪たちが一斉に青年に襲い掛かる。
その数、数十。
「!!!」
襲い掛かる妖怪たちの気配に気づいた青年は背中から素早く木槍を取り出すと目にもとまらぬ速さで妖怪たちを払いのけた。
幼い頃から自分の身を守るために戦ってきた彼にとって小妖怪をかわすくらいはお手の物だ。
だが、幾度となく攻防戦が続くとさすがに疲れが見え始めてくる。
「きりがねぇな」
その時、どこからともなく1人の少年が襲い掛かった。
≪覚悟っ!≫
「しゃらくせぇ!」
青年は木槍で少年をかわそうとしたが、少年は無数の蜘蛛の糸を彼に向かって放った。
ねばねばとした蜘蛛の糸は青年の木槍と体に絡みつき、あっという間に動きを封じてしまう。
「蜘蛛妖怪か…!しまった!!」
≪おや、まぁ。これでは自慢の槍は使えぬのぅ。さすがは蜘蛛丸じゃ≫
蜘蛛丸と呼ばれた少年に青年の動きが封じられたのを見て取って、木陰から高笑いと共に姿を現したのは妖艶な微笑みを称えた艶やかな着物の女性だった。
一見は人間に見えるが、禍々しい妖気を纏っている。
「…あんたは何者だ?」
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