滝夜叉姫

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≪わらわは滝夜叉。父上の命により、そちの命もらうぞ≫ 「なっ…」 ごくりと息を飲む青年の脳裏に男の低い声が響き渡った。 〈滝夜叉…だと?俺が代わろう〉 ―頭の中で声がする…誰だ? 〈碓井貞光(うすいさだみつ)と申す。助太刀いたそう〉 ―何!? 戸惑う青年の意識をよそに、心臓がドクンとなった。 そして急に意識が遠のいていく。 ―体が…乗っ取られる…ようだ。 ドクン、ドクン。 ≪蜘蛛丸、トドメを刺しておしまい≫ ≪ハッ!≫ 蜘蛛丸と呼ばれた少年は青年の心臓を突き刺そうと短刀を振り上げた。 その時、青年の瞳が金色に変化した。 「そうはさせぬぞ、小僧!」 青年の纏う空気が変わり、彼は蜘蛛の糸を引きちぎった。 ≪何!?おれの糸が…!≫ ≪何をしておる。早くトドメを!≫ しかし叫ぶよりも早く、青年は蜘蛛の糸から逃れると蜘蛛丸に飛び掛かった。 そして彼の短刀を抜き取ると蜘蛛丸の首元に突き付ける。 ≪うわぁ!≫ 思いがけず身動きを封じられ、ピリッとした空気が流れる。 「形勢逆転だ。この碓井貞光をなめてもらっちゃこまる」 ≪碓井…!≫
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