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滝夜叉は青年を睨み付け、ピクリと眉を動かした。
そして碓井と名乗った青年は容赦なく短刀を引いた。
だが、蜘蛛丸はすんでのところで致命傷を避け、短刀は首元をかすめて赤い筋を浮かび上がらせた。
≪チッ≫
蜘蛛丸は強引に青年の体を押しのけるとその手を逃れて距離をとった。
≪碓井め…相変わらず容赦ない男だのぅ≫
「俺を殺しに来た奴に容赦などするものか。お前のように性根の腐ったやつらが相手なら尚更だ」
≪ふっ、随分な言いようよ≫
≪滝夜叉様はこの男をご存じなんで?≫
不思議そうに尋ねたのは蜘蛛丸だ。
≪あぁ、頼光四天王の1人・碓井貞光といえばとんだ食わせ者で随分とわらわの邪魔をしてくれたものだ…憎い男よ≫
そう、実はこの2人、かつて対峙した因縁の仲なのである。
「とんだ悪党が何をいう」
≪積年の恨み、晴らしてくれるわっ!≫
滝夜叉は自ら刀を手にして貞光に斬りかかった。
そこで貞光は木槍で刀を弾き飛ばすと彼女を牽制した。
「相も変わらず血の気の多い女よ」
≪ええい!蜘蛛丸!!やれ!!≫
≪ハッ!≫
蜘蛛丸は滝夜叉の合図で再び蜘蛛の糸を貞光に放つ。
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