26人が本棚に入れています
本棚に追加
すると公時と攻防戦を繰り広げていたガシャドクロは見る見るうちに姿を消した。
残すは滝夜叉1人と察して彼女の顔が青ざめた。
≪そんな馬鹿な…わらわが負けるはずない…≫
彼女はわなわなと唇を震わせ、咄嗟に取り出した懐刀で貞光を斬りつけた。
貞光の肌に赤い線が浮かび上がった。
「くっ…」
だが、彼女を抑える貞光の腕は緩まなかった。
「貞光!こいつでトドメを!」
公時はそういって何かを投げてよこした。
一振りの太刀だ。
「太刀?」
「お前の石切だ。必要だろ?」
彼が投げてよこしたのは碓井貞光のかつての愛刀・石切だった。
太刀を受け取った貞光が躊躇いもなくそれを抜くと滝夜叉の顔が見る見るうちに土気色に変わる。
≪嫌だ。死にたくない!≫
滝夜叉はじたばたと暴れ始めた。
「観念しろ」
≪観念などするものかぁぁぁ!!!≫
貞光が太刀を振り上げた瞬間、滝夜叉は力を振り絞って身をよじる。
ストン。
振り下ろされた太刀によって彼女の腕が1本落ちた。
≪ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ≫
耳をつんざくような悲鳴を上げ、のたうち回った。
しかしそのおかげで貞光から逃れることができたのである。
最初のコメントを投稿しよう!