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着物で隠れてはいるが、彼女の片腕がなくなっているのは見るからに明らかであった。
≪滝夜叉、その腕はどうした?≫
≪これは…わらわが不甲斐ないために頼光四天王の奴らに斬り落とされたのです≫
≪奴ら、目覚めたばかりだというのに滝夜叉を負かすほど力をつけているとは…な≫
≪すでに碓井と坂田の両名は合流。わらわと蜘蛛丸では太刀打ちできませぬ≫
≪そうか。少々、奴らを侮っていたかもしれぬ≫
≪父上、申し訳ありませぬ。わらわにもっと力があれば…!≫
≪気に病むことはない。奴らの相手ならば他にいくらだっている。それよりもワシが命じたばかりにお前の美しい腕をこんなにしてしまって…すまぬ≫
烏天狗はそういって優しく滝夜叉姫の腕をさすった。
≪必ずお前の敵はとってやるぞ≫
≪父上…≫
≪そうだ、大江山(おおえやま)の酒呑童子(しゅてんどうじ)と鈴鹿山(すずかやま)の大嶽丸(おおたけまる)に協力してもらうとしよう。奴らは人間によって退治された鬼神、人間への恨みは深かろう。きっとワシらの力になってくれるはずだ≫
烏天狗の言葉に滝夜叉姫はゴクリと息を飲んだ。
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