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やがて煙が充満し、酸素が薄く息苦しくなってきた。
公時がゴホゴホと咳き込みはじめた。
〈このままではマズイ…何か手立ては…〉
そんな中、貞光は何かひらめいたようでどかんとその場に腰を下ろした。
そして目を閉じて瞑想を始める。
「貞光!こんな時に何やって…ゴホッ」
公時は苦しそうに貞光にもたれかかるとそのまま気を失ってしまった。
すると間もなく、彼らの体を温かな光が覆った。
次の瞬間、その光は爆発を起こし、彼らを取り囲んでいた建物も炎も吹き飛ばした。
貞光が神仏の力を借りて術を打ち破ったためである。
≪何っ!?≫
遮るものがなくなってついに対面した声の主は若い鬼だった。
ほっそりとしなやかな肢体、額には1本の角が生えていて端正な顔立ちをしている。
だが、正確には少々難がありそうだ。
「お前が俺たちを焼き殺そうとした犯人か!」
≪チッ。なーんだ、焼き殺してやるつもりだったのに死んでないのか。しぶとい奴≫
「お前は一体何者だ!?」
≪僕?僕は大嶽丸(おおたけまる)≫
「大嶽丸だって!?」
貞光はその名に聞き覚えがあった。
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