鈴鹿山の大嶽丸

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大嶽丸といえば滋賀県と三重県の県境に位置する鈴鹿山に住みつき、悪名高く、日本三大妖怪にも名を連ねる有名な鬼神の名なのである。 〈こいつが大嶽丸?〉 想像していた鬼神よりもずっと若く見えるが、伝説通りの人物ならば油断はできない。 貞光の背中に緊張が走り、ピリッと空気が張り詰めた。 「なぜ俺たちを狙った?」 ≪それはもちろん、最愛の御前に頼まれたからさ。お前らを始末しろってね!≫ 〈御前?〉 御前と言えば思い出されるのは鈴鹿山に天下った鈴鹿御前と呼ばれる天女。 鈴鹿山に住んでいた美女で大嶽丸が一目惚れをしたという話はあまりにも有名だった。 だが、彼女は人間と結ばれ若くして命を落としたという。 そんな彼女がまさか甦って指示をしたとでもいうのだろうか? しかし、そうだとしても彼女に狙われる理由なんて生憎見当もつかない。 烏天狗と繋がっているのだろうか? ≪御前はお前たちを倒したら僕の想いを受け入れてくれるって言うんだ。やっと僕の想いが通じるんだよ!そこで見ててね、御前!!≫ そういって大嶽丸が視線を送った先に着物の女が一人、木陰に立っているのが見えた。
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