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大嶽丸は小刀片手にうずくまったままの貞光目掛けて飛び掛かる。
これは貞光にとってまたとないチャンスだった。
〈大嶽丸を引きつけて抑え込むんだ〉
氷の刃を一身に受けながら、大嶽丸が近づくのを待って彼は腕をむんずと掴んだ。
そして石切丸で心臓を突き刺した。
≪うぎゃぁぁぁぁぁ≫
鮮血が噴き出し、悲鳴があたりに響き渡る。
しかし、貞光は更に大嶽丸の首を斬り落とした。
地面にごろんと落ちた首は端正な男の顔立ちではなく、醜い青鬼の顔をしていた。
「大嶽丸の正体は青鬼か」
そしてふと鈴鹿御前だという女に視線を向けると彼女は慌てて逃げるように去っていった。
去り際、かづいていた布がふわりと浮いて女の顔がちらっと見えた。
「あれは滝夜叉!」
どうやら滝夜叉姫は自分を鈴鹿御前と思わせて大嶽丸を操っていたらしかった。
縁も所縁もない鈴鹿御前に狙われるなんておかしいと思っていたのだ。
でも正体が滝夜叉姫ならば納得である。
「あの女、小癪な真似を!」
苛立ったものの、貞光は彼女を追うことはしなかった。
そして気を失っている公時に駆け寄ると乱暴に頬を叩いた。
「公時!公時!しっかりしろ!!」
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