鈴鹿山の大嶽丸

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しばらくすると彼はようやく目を覚まし、咳き込んでいた。 どうやら彼は大量の煙を吸い込んでしまったらしい。 「公時、ゆっくり呼吸をするんだ」 公時は素直にゆっくりと深呼吸した。 すると少しずつ呼吸が楽になって落ち着いてきた気がする。 「大丈夫か?」 「…うん、なんとか」 呼吸もどうにか落ち着いて貞光を見上げると彼が傷だらけだということに気づいた。 「貞光、その傷…!」 「あぁ、大嶽丸にやられた」 「大嶽丸?」 「知らないか?大嶽丸は卜部の先祖に討たれた鈴鹿山の有名な鬼神だ。正体はそこに転がっている青鬼だったようだがな」 公時は転がっている青鬼の首を見て瞳をキラキラさせた。 「そんな悪名高い鬼を貞光一人で倒したのか?さすがだな!荒太郎(あらたろう)の名は伊達じゃないな」 「荒太郎か…久しぶりの響きだ」 実は貞光は豪快な性格と派手な長物捌きから一部で荒太郎と呼ばれていた。 頼光四天王の中でも卜部だけは彼のことを荒太郎と呼ぶ。 「で、どうやって倒したんだ?」 「…倒せたのは神の加護のおかげさ」 「神の加護か。さすがは神に愛される男だな!」
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