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 ロボットは、神はいないと吐き捨てるように銃を構えた。  しかし、小銃は耳をつんざくような衝撃音とともに視界から消えた。 「乗れ! 緊急避難口に行くぞ!」  ベッドで見つめあったとき、雄二の頭と足から血など流れていなかった。彼は至るところを負傷していて、小銃も失っていた。  雄二の背中におぶられ、ドローンはいつもより大きい音を出して加速した。最大積載量を優に越しても、その俊敏な動きは健在だ。 「雄二、おばあちゃんを助けなきゃ!」 「あの人は格納庫で戦ってる。大人はドローンと司令部を死守しなくちゃならないんだ。それに、全員が逃げるにはロボットを殲滅する必要がある。ドローンは無限にあるわけじゃない」 「そんな、おばあちゃんを見捨てるなんて!」 「そんな言い方するな! 俺だって、本当は志願したくなかった! クラスメイトも親も国のために戦おうとしてるのに、自分だけ逃げられるわけないじゃないか! 俺にはやりたいことがある! 死にたくないんだよ!」  返す言葉はなかった。雄二のいうとおりだ。誰も戦いたくないのに戦いたいように振る舞う。自分の気持ちを知らぬ間に偽って、あろうことか実際に死んでいく。そんな馬鹿な話が現在進行形で実現しているのだ。  ドローンは猛スピードで廊下を進んだ。浮いているから、まっすぐ前を見ていればおびただしい数の死体を見ずにすむ。  彼らは無駄死にしたわけではない。ロボット兵もまた、カラフルな電線をはみ出させて、酷いものは燃えている。下手したら、人間の最期より悲惨だ。  格納庫とは反対方向に、避難口がある。そこには何人かの職員が倒れており、私たちに気づくと、溺れているような声で叫んだ。 「ドローンは全部壊されたはずなのに! 乗せろ! 頼む、乗せてくれ!」
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