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俺とお前の関係性
俺の家は古い。とてもボロい。
築40年は経つ。
「お父さん、建て替えましょうよ」
お袋がいくら云っても、オヤジは首を縦には振らない。
仲のいい銀行の支店長は、金を貸す気は満々なのに。
いつも偉そうにしているオヤジだが、不安定な自営業で借金するのが怖くて出来ない小心者なのだ。
どこもかしこも古いし、使いがってが悪い。
そういえば、未だに窓はサッシではない。
一番、使いにくいのは台所だ。
それにトイレと風呂場。
台所(キッチンなどとは、とても呼べない)
の狭さといったら酷いものだ。
レンジを買ったところで、置き場所が無い。
こんな動き辛いところで、文句ひとつ云わずに食事を作ってくれる、お袋には感謝しかない。
俺は大学3年だが、家庭教師のバイトを幾つかしている。
オヤジが、いつまで経っても入学金のことをネチネチ云って来るのが嫌で、学費は自分で払うと決めたのだ。
バイトから帰った俺は風呂に入ることにした。
風呂場とトイレは並んでいる。
そこに、すっごく狭い脱衣所がある。
床が木で出来てるので、ギシギシ鳴るのも、気持ちは良くないが、それ以上に問題なのは穴があいてることだ。
この穴からアイツは出入りしている。
アイツの正体、それはネズミだ。
服を脱ぎ、風呂場に行き、俺はため息をつく。
「やられた」
またアイツに石鹸を盗まれた。
穴から自由にやって来ては、石鹸を強奪する。
仕方がないから新しい石鹸を取って来る。
「まだ新品だったのに、もったいないなぁ」
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