お迎え課

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お迎え課

「はい、では確かに預かりました」 俺は煩雑な事務手続きをすべて終えて、病院から赤ん坊を受け取った。 俺には、複雑で面倒くさい事務手続きをこなす適正と、ふにゃふにゃした赤ん坊をきちんと抱えられる適正が備わっている。 同僚の運転する車に乗り込むと、 「ごくろうさん」 車は地面を滑るようにスタートした。 これもまた当り前、同僚は車の運転の適正者だ。 俺たちは個々の適正を国に認められて、この『お迎え課』で働いている。 俺は、 「さて、この子はどんな適正を持っているのかな」 チャイルドシートに寝ている赤ん坊を振り返った。 「さぁね。でもちょっと信じられないよな。少し前まで人類は自分の適性を知らずに、自分に合う仕事を探して右往左往してたなんてさ」 「ああ、合わない仕事に神経を削られて、自殺する事例もあったってんだから不幸な時代だよ」 「その記事は、俺も国会図書館で読んだよ」 現代、人は生まれるとすぐに、その人が持つ適正を調べられ、適正にあった職業の訓練施設に行く。 どんなに適正があっても訓練しなければ身につくことはないからだが、その適正を調べることもできず、運を天に任せて就職していたというかつての時代は、どんなに苦しかったことだろう。 俺たちが働くお迎え課の『適正判断機』が出来てから、人は生まれたすぐから己の適正をのばす訓練所で育ち、己の適正にあった仕事につけるようになった。 何もかもスムーズだ。 赤ん坊もベルトコンベアーに乗るように手続きさえ済めば、こうやって俺たちの手に渡される。
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