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おや?!
先程恵が覗いていた猫足キャビネットの引き出しが半開きになっている。小さな引き出しの中には色とりどりのポイントカードが乱雑に散りばめられている。
几帳面な恵の所作とは思われない、その乱雑さの底に埋もれた一冊の真っ赤なノートが目につく。
思わず手に取り、徐に最後のページを開いた。
【9月3日
BAR HERAでデート。カウンター二番、三番に着席、二時間滞在。
香奈10ポイント 玲二15ポイント】
【HERA 店内北側九番テーブル席で露出度高め(Level 3)の服装にて玲ニを挑発。
マリエ5ポイント】
【9月4日
マリエになりすましたLINEの呼びかけに応じる。待ち合わせ指定場所yellowroseに三時間滞在。
玲二 1ポイント】
【玲二の心の中はいつも他の女の事ばかり。
憎い。悲しい。苦しい。辛い......】
何だこれは!
ホテルに行った。食事をした。香奈とマリエ、そして俺の詳細な行動履歴が記載されている。恵が長年書き認めた分厚いノートは悲憤の記録でびっしりと埋め尽くされている。
身を凍らせるモノはそれだけでは無かった。
名前が書かれた付箋が三枚。それはポイントの累計が記載された個人ページを指す。
【香奈 1000ポイント 達成】
【マリエ 1200ポイント 達成】
目標値に見事達成した香奈とマリエのページには大きく【死】という血文字が!
俺のポイントは!?
ページの最後の行を見た。
【玲ニ 10,000ポイント 達成
憐れで醜い私の記録を見てくれた?
さあ、二人で終わりにしましょう!】
凛とした美しい筆跡。
「ポイント達成おめでとうございます」
待ち構えていた恵の涙声と共に背中に激痛が走った。
了
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