詩「月夜の晩に」

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きみはなにもしらない だからきみはしあわせなんだ セミの鳴いた坂道を 小さなきみと一緒に歩いてかいた汗は きっとぼくが死ぬときの思い出の中で また流れて来ると思っていて 誰かの祈りが 風を生むように きみの成長が ぼくをどこまでを幸せにする 月の見えるベランダから 終電を逃した人がタクシーに乗って 遠くの峰へ消えていくのを しまい忘れた 洗濯したぬいぐるみのように 目を細めて見つめている そんな月明かりに照らされて 昔 ぼくの父が言った言葉を ふと思い出したんだ 月を見て詩を呼び込むように 言葉の向こう側にある情景を生きろ と 手を伸ばしたら 届きそうな瞬きに ただそのまま 時間が流れるまで 指先の爪が 伸びて掠めるまで 悲しみの幸せが 瞬くまで きみを抱きしめていたい ぼくはなにもしらない だからぼくはしあわせなんだ
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