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きみはなにもしらない
だからきみはしあわせなんだ
セミの鳴いた坂道を
小さなきみと一緒に歩いてかいた汗は
きっとぼくが死ぬときの思い出の中で
また流れて来ると思っていて
誰かの祈りが
風を生むように
きみの成長が
ぼくをどこまでを幸せにする
月の見えるベランダから
終電を逃した人がタクシーに乗って
遠くの峰へ消えていくのを
しまい忘れた
洗濯したぬいぐるみのように
目を細めて見つめている
そんな月明かりに照らされて
昔
ぼくの父が言った言葉を
ふと思い出したんだ
月を見て詩を呼び込むように
言葉の向こう側にある情景を生きろ
と
手を伸ばしたら
届きそうな瞬きに
ただそのまま
時間が流れるまで
指先の爪が
伸びて掠めるまで
悲しみの幸せが
瞬くまで
きみを抱きしめていたい
ぼくはなにもしらない
だからぼくはしあわせなんだ
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