1人が本棚に入れています
本棚に追加
「これを見ながら飲む酒は美味いな」
「そうですねえ」
モニターに映し出された映像を見ながらワインを嗜むのは、身なりの整った人間達だ。
「怒りという感情を売って金にしたはいいが、やはり怒りはいいよ。生きているという感じがするからな」
「ええ、分かります。こうして見る下人の安い怒りはツマミに丁度いい」
『憤怒バー』は現代で言う見世物小屋だった。怒りを売りたくない人間を見物する悪趣味な場所だ。
「貴方もお人が良いですなあ」
「ははは、正直に言っていいのですよ。私は悪趣味だと」
モニターに映る人間を心底軽蔑したような顔で見つめるのは、この世界を作り出したと言っても過言ではない男、科学者だった。
「私の、ひいては地球のために協力しない人間達です。こうした扱いを受けるのは当然のことでしょう」
怒りを発散させる人間達は醜くて仕方がない。怒りをエネルギーへ変えた科学者の胸の中には、未だ消えない怒りが残ったまま燻っているのであった。
Fin.
最初のコメントを投稿しよう!