吊り橋効果ってホントです?

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✳︎✳︎✳︎ 「なあ、なんか怒ってる?」 ハルユキがハンドルを回しながら、顔を覗き込んでくる、気配。私が頑なに真正面を見つめているもんだから、ハルユキがどんな表情を浮かべているかは、実際のところわからないのだけれど。 きっと、眉毛がくっつきそうなくらい、眉間に皺を寄せているのだと思う。 「別に」 「そう? なんか機嫌悪そうだから」 「そんなことない」 帰りの雪道。やっぱりハルユキはいつもより、急いでいる。ハンドルを操る手が、全然丁寧じゃない。雑の極み。 「晩メシ、一緒食うだろ?」 「え?」 「え、って。なに? なんか、用事あんの?」 (用事あんのは、あんたでしょーよ) ひねた心は歪な形。私は今朝握ったおにぎりを握るように、歪な形を直そうと試みる。けれど、今朝は良かったんだよ。楽しみでわくわくしてたから。玉子焼きだって、ハルユキが好きな調味料の配合、ちゃんとメモ通りに作ったし。 (やっぱり急いでる。……夜、ユリと会うのかな) さっきから右に左にと身体にGがかかってる。アクセルを踏む足に力が入っていて、そうなっていることに、私はとっくに気づいてしまっている。 「ねえ、雪道だからもうちょっとゆっくり……」 「なあ晩めし、食わねえの?」 「スピード速すぎるよ」 そして、一旦はアクセルを緩める。 「俺、今日さ……」 ハルユキが言いかけて、私は慌てて遮った。 「わかったわかった、用事があるってんでしょ。早く帰りたいんだったら、スピードでもなんでも出せばいいよ」 言い方。失敗。溢れ出る感情に蓋ができなかった。公園の飲み水の水道のように、ぶしゃあっと水がほとばしるようにでも。 「なんだよ、それ」 少し不満な口ぶり。 そんなハルユキの返しに、やはり私の感情は焼き切れた。 「どうせ事故して死んだって、別にそれでいいってことでしょ」 ハルユキが、急にブレーキの方へと足を踏みかえた。 ぐうんっと前のめり。 路肩にスペースを見つけて、車を停車させたのだ。それからは、ゆっくりと停まる。 沈黙が、空間を埋めた。 ハザードの、カッカッカッという音が、このまま永遠に響いていくような気がして、背中にゾッと寒気が走る。
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