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「……ハルユキは? 大丈夫? わ、私は大丈夫だよ。どこもケガして、な、い、と思う……」
そして、顔を元に戻す。首に少しの痛み。そして、目の前のフロントガラスには大量の雪が積もっていて、視界が遮られている。
はああっと目一杯に、息を吐いたハルユキ。
その安堵の息に促されるように、再度ハルユキの方を見た。すると、ハルユキは膨らんだエアバックに、ボスっと顔を埋めた。
「よ、……良かったあ。良かったよう、良かったぁぁぁ、う、う、」
え。
え。
え。
まさか、ハルユキ、泣いてる?
「ハルユキ、」
「ごめん、ごめん、ナツナ。お前が何度も、スピードっ、て注意してくれてた、のに、俺。……ひっく、ひっく、」
「うそ、ここで泣くかあ? イヤだ、泣かないでよぉ」
そして私も涙腺崩壊。安心した途端、私の目からも、ぼろぼろと涙が溢れて落ちた。
けれど、そこではっとした。
「ハルユキ、ここ、ほ、歩道みたい。だ、誰か巻き込んでない、かな」
そして、二人。顔を見合わせてから、車から慌てて降りた。周りを一周し、誰も巻き込んでないことを確認すると、
「ナツナ、ナツナ、」と、ハルユキが抱きついてきた。ハルユキの鼻が真っ赤に染まっている。
それはもちろん、この車の惨状を見たら、こうなることはわかった。
橋を渡り切った場所。歩道横。ちょっとした空き地のようなスペースに、大量の雪が捨てられていた。これは多分、除雪車かブルドーザーかで、道に降り積もった雪をかいて、一箇所に集めて捨ててあったような、そんな雪の山に、車は見事に頭から突っ込んでいる。
ある程度は固まっていた雪であったのだろう、車のフロントはグシャと潰れている。車高よりも高く積み上がった雪が、その衝撃で落ちてきて、フロントガラスを覆っている。
これは結構な事故にあわない限り、こんな風にはならないだろう、という車の有様だった。
「ごめんな、ナツナ。こ、こんな危ない目にあわせ、て。ご、ごめ」
抱きついたまま、鼻声で謝ってくる。
私もハルユキの背中に手を回すと、ぎゅっと抱きしめて目を瞑った。
「ごめん、私もごめん、私もごめんう、うえ、うわあん」
助かったという安堵と、怖かったという恐怖から、私とハルユキは抱き合ったまま、その場に座り込んだ。
「ハルユキぃ、良かったよう、生きてて良かったよう」
「うんうん、良かった、ケガなくてほんと良かったな」
「奇跡だよ、これ。だって、一回転したんだよ?」
「九死に一生を得るっていうの、まさにこのことだろぉ」
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