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このハルユキの真面目さがあったからこそ、面倒くさがりかつ人の意見にふらふらしてしまう私が、真っ直ぐな道を迷うことなく歩み、大学生にまでなれた所以っていうね。
「さあ、出発」
「スノボへGOー」
テンション上がるかと思いきや、いつもあっさり味、こんな調子の二人。いやいや、もう付き合い長いから、こんでいーの。
✳︎✳︎✳︎
ハルユキの運転で、道を往く。少し、寒さが増してきたかなあと思って膝にブランケットを掛けた途端、周りは雪景色と化した。
「寒う」
「ああ、寒みいな」
「暖房、最強にしよ」
「おいこら、勝手に触るんじゃねえ」
「だって、こんなに寒いのに、『1』はない。せめて『2』でしょ」
「バーカ、余計なガソリン食うだろうがっ」
「じゃあ、『1.8』」
私が絶妙な位置に暖房のツマミをセットする。
けれど、ハルユキはその神がかった位置におわすツマミ様を、カカカッと元の位置へと戻す。非情だな、悪魔か。
そうこうしているうちに、あっという間に雪道だ。スタッドレスは履いているけれど、滑らないとは限らない。
ガリガリと嫌な音がして、私は少しだけ恐怖を感じた。がスルー。
ハルユキが、大学合格祝いにおじいちゃんに買って貰ったという、GのSHOCKの腕時計をチラッと見る。
「やべえ、間に合わなくなる」
「なにがなにが?」
「ん、イベント」
「イベントー⁇ なんなん⁇ それ」
「……宝探し」
と言いながら、ドリンクホルダーを、ん、ん、と、あごでしゃくる。
宝探しなど初耳だが? と思いつつ、私はドリンクホルダーに置いてあったポットのフタを開けた。ほわっとコーンスープの香り。ゆらゆら湯気が立ちのぼる。猫舌なハルユキのために、私は腹筋を大いに使って、フーフーしてやった。
「宝探し? 子どもか」
「雪山が作ってあって、そん中に宝が埋めてあるらしい。それを掘り出して探すんだと」
「え、まじで言ってる?」
「それに参加するつもりなんだよ」
自分のスマホの時計を見ると、現在、8時ちょっと前。
「スキー場って、何時に開くんだっけ?」
「8時だっけな? それよりよー。そのイベントが、9時からなんだよ」
「ちょま、待て。てか、完全に間に合わんよねそれ」
「アウトか? それはヤバイ」
イソグゾ。
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