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それなのに。今日は少しだけ違和感を感じるのも確かだ。
よくよく考えてみれば、朝からおかしかった。
今朝、早くに設定した待ち合わせの時間。いつもなら遅刻寝坊なんぞ、私の専売特許のはずが。
来ない。
いつまで経ってもハルユキが来ない。
「おかしいな、いつもは時間より早く来るのに……」
スマホで電話すると、その私の電話で、目が覚めたという。電話越しに、うおおお寝坊したっっ‼︎ という叫び声とガタガタドスンドスンっという、謎の音。
ようやく来たと思ったら、ボサボサの頭。目の下のクマ。ひど。
「珍しいねえ、ハルユキが寝坊だなんて」
「ほんと悪ぃ、昨日あんま寝れんかったもんだから」
「そうなんだ、スマホでエロでも見てたんじゃないの?」
ちょっとからかっただけなのに、ちげえ‼︎ って大きな声をあげて、それきり黙ってしまった。
まあ、直ぐにご機嫌は直った、のだが。
(とにかく、これはなんかあったな?)
懐疑心と、いまだスピードを抑えないハルユキのハンドルさばきに恐怖心を覚えながら、私たちはスキー場へと続く山道に差し掛かった。
✳︎✳︎✳︎
頑なにハルユキがスピードを緩めなかったこともあって、順調にスキー場には着いた。
だが。
「あーーーやっぱ間に合わんかったああぁ」
宝探しのイベントは終了。ガチャガチャのカプセルに入れられた粗品(これはもう粗品にしか見えない。だってスキー場のキャラのピンバッチだぜ?)を振り回しながら、嬉しそうに親元へと帰っていく子どもたち。
「うん、間に合わんかったけど、マジであれに混じるつもりだったんかい⁉︎」
「だっ……って、楽しそうだし。宝探しは男のロマンだし」
「それはわかる。女にとってもロマンだけど」
「ナツナの場合はロマン=金だろ⁉︎」
「まあね。あの踊るスノーマンのピンバッチではない、ということは断言できる」
そんな会話を交わしながら、ハルユキがスノボの板を下ろす。
「どっちにせよ、これ絶対小学生以下限定ののイベントでしょ。入り口で、えへへわたち小学生でしゅーって言い張って、冷ややかな目で見られるより、間に合わなくて、はい終了で良かったわ。今心底、ホッと胸を撫で下ろしてるから」
その通りだ。もしハルユキが寝坊しなかったら、と思うとゾッとする。
ハルユキはヤルと言ったらヤル男なのだ。
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