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「……くっそー」
ハルユキはリフト券を購入するまで、ブツブツと文句を言っていた。正直、そこまでやりたかったのこれえ⁉︎ と、横目で宝探しで子どもたちに踏みつけられた雪山の残骸をちらりと見る。イベント終了の立て看板と、立ち入り禁止のコーンの赤色と、コーンバーの黄色と黒のトラ模様。
真っ白な雪原の中、インスタ映えしている。いと虚し。
(たまに、あんたのこと、わからなくなるわあ。見失うわあ)
ハルユキを見る。背は180あってスラリの、スタイル。運動神経は抜群に良いわけじゃないけど、悪いわけでもなく、そこそこで。顔は、ジャニーズにギリ入れるかってくらいのイケメンとも言えるし、まあ確かにイケメンと言えなくはない、そこそこって感じだし。
生まれた時から幼馴染だから、総合的に見てカッコいいのかどうなのかは、判断できず。ハルユキの周りに群がる女子の量とぽわわーんってなってるその顔で、その都度、モテバロメーターを判断しているという。
そんなハルユキからハッキリと付き合おうって言われた時、「え⁉︎ あ⁉︎ ほ⁉︎ うほ⁉︎(……エネゴリ?)……えーーっと、えっと……はい?」っていう反応しかできなかったことは、いまだトラウマ。告白現場にしては、女子として最悪な姿を晒してしまった。だって、私的にはすでに付き合ってるような感覚だったから、それを一からやり直すみたいに、付き合ってくれ、とは。
それだけ、ハルユキは私にとって、近しい存在だったのだ。『隣にいるのが自然、すでに空気(エアー)』というくらいに。
「さあ、リフト乗るぞ」
リフト券を手に入れ、リフト乗り場へと移動する。ボードのビンディングにブーツを滑り込ませ装着。自由な方の足で、雪を蹴る。
少しだけヨロけて、腕をぐいっと引っ張られた。
「あ、ごめん。ありがと」
リフトに乗る時、一歩出遅れた私を乗場へと誘導してくれた。背後を回ってくるリフトを横目で確認しながら膝を曲げると、ドスンとお尻がリフトのイスに着地。
厚地のウェアでも触れた右側の腕に、ハルユキの体温を感じて、少し照れた。心なしか、右の太ももも触れている、気がする。
「なあ、もうそろそろ俺、下まで滑ってっちゃっていいのか?」
「あー、うん。多分もう大丈夫。一気に滑れると思う」
「何回目だっけ?」
「三回め」
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