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「まあ、おまえは元々スキーやってたからな。飲み込みも早えし」
「ふふん、まあね」
リフトが風を切って、真っ白な雪一面の山肌を、グウングウンと登っていく。
「ナツナ、降りる時……」
「んー?」
「背中押してやる」
「よろー」
リフトが頂上に到着し、腰を上げる。リフトのイスに膝裏を押されながら前へ進むと、ぐらっと身体が揺れたと同時に、背中にハルユキの手が回った。
「足で蹴れ」
言われるままに、足を動かす。
背中を押してやると言っていたのに、ハルユキの腕は私の肩に回され、いつのまにかハルユキの身体に引き寄せられている。そして私なんかはあろうことか、ハルユキの腰に右腕を回し、倒れまいと掴まっている、ではないか。
ヒューと誰かが囃した声。
けれど、気恥ずかしさなんかは全然、感じない。付き合いが長すぎて、こういうのが当たり前になっている証拠なのだろう。
リフトを難なく降りると、私たちは雪山の頂上に着いた。リフトに乗っている時は感じなかった山の斜面が、こうして頂上に立ってみると、とても急に思える。
「うわ久しぶり過ぎて怖い。急斜面」
「大丈夫か? 俺が後ろからついていこうか?」
最初からボード派だったハルユキのボードテクは素晴らし過ぎるので、私は、先に行って、と断った。まだ三回目のノロノロな私に付き合っていたら、それこそハルユキが楽しめないからだ。
「じゃあ下のリフト乗り場で待ってるから、ゆっくり降りてこい」
そう言って斜面を滑り出すその後ろ姿。ちょっと見惚れてしまうくらいには、まあカッコいいのかな。
そして、私もボードを少しずつずらしながら、斜面へと乗り出す。その斜面の容赦のなさに、おうっとなるけれど、ここまで来たんだからこれはもう滑って降りていくしかない。
「よし、行くぞ」
勇気を振り絞って、私は身を乗り出した。
✳︎✳︎✳︎
宝探しのイベントに間に合わず、少し不機嫌だったハルユキの機嫌が、お昼ごはんの頃にはもう回復してきて、私はふうっと息をついた。
それにしても一体、何がどうなってるのか。陰気な私よりは断然気は長いし、不機嫌より笑っていることの方が多い、普段から明るいハルユキなのに、今日はなんともチグハグだ。
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