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その時、マザーの力いっぱいの叫びが部屋に木霊した。
「2人とも早急に立ち去るのです!!」
手を拘束され身動きが取れずぐったりとしているマザーの姿が現実に呼び戻した。
リリユスの背後に構える漆黒の龍。なんとも禍々しい気配に圧倒され、足がすくむ。
「リリユス、どうしてこんな事をしたの……?」
冷静な眼差しの奥に怒りの念がみなぎっているロザ。当たり前だみんなを殺された事にロレッタも怒りを感じずにはいられない。だが、魔力のないロレッタでも感じる邪悪なオーラ。その圧倒的な力の差に身体がすくんで動けないのだ。
リリユスはふっと一息吐くとこちらを見つめた。その瞳の冷たさに寒気を感じた。
そうだ……またこの夢だ。これは悪夢。
ロレッタは忌々しい過去に蓋を被せるように心の中で唱えた。
これは悪夢、覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ……………
徐々に魂は白の箱庭へと昇っていくとプツンと意識が途絶えるのを感じた。
あの日感じた絶望、リリユスに奪われた禁書、そして黒の魔導士集団による魔人復活の目論見が交差し、レグナマリアは滅び、黒の魔導士の拠点と化した。あの悲劇から十年、魔人が蔓延る世界に抗いもがく者がいた。
長き冒険が今、幕をあけた。
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