第1章過去編 第1話 聖なる森

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 「本当に平凡な庶民の顔してとんでもない力技を持ってるものね。驚きね」 相変わらず驚いているか分からない冷静な顔で言っているが若干口角が上がっているのを見逃さなかった。これは相当驚いているなと長年の勘が言っている。驚いてるかどうかは関係ないのだが。  「と……とにかくあ……ありがとう。さ、先に進も」 ロザは敵感知魔法を唱え、他の凶悪な魔物が潜んでいないか確認した。どうやらジェリーやホーネットといった小物だけのようだ。火に臆病な魔物ばかりなのでランタンをもっておけば襲われることはない。  私たちは入り組んだ小道を枝を掻き分け前に進んで行く。すると吹き抜けになっている場所に辿り着いた。月明りが天から降り注ぎ木々が七色に輝いて見えた。これは魔法の源泉が粒子状に巡っていることで光がそれに反響し、まるで夢の世界に来たような感覚に襲われた。  煌めく夜空が幻想的で星々がキラキラと輝いている。生まれてこの方こんな世界もあるのだと初めて知った瞬間だった。しばらくのんびり景色の余韻に浸った後、再び歩み出した。夜が明けてしまったら次の夜まで蒼魔草は取れなくなってしまうから。  
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