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破落戸も笑いながら、カッターナイフを取り出した。
良いの、その武器で?
きっと、見た目だけで判断しているのだろうけれどね。
ま、普通に考えて――中学生ぐらいの人間がスタイラスペン片手に破落戸に刃向かおうなんて構図を見て、誰が勝つかというのは、火を見るより明らかだったりするのかもしれない。
「ニタニタしやがって……。攻撃しねえなら、こっちから行くぞ、おらぁ!」
破落戸は走る。けれども、破落戸は身体が大きいから、スピードは出ない。重さというのはあるのだから、威圧感はあるのだろうけれど、それも意味を持たない。
では、僕はどうするかというと――破落戸の行動をある程度予測しておいて、上手く破落戸の攻撃を避ける。
そして避けたタイミングで、こめかみの辺りにスタイラスペンをつん、と押し当てた。
このスタイラスペンは特殊でね……、実は僕がちょいとボタンを押せば電撃を流すことが出来る優れもの。
ま、そんなこと言っても実際はドンキホーテで売っているようなパーティグッズなのだけれどさ。でも、これを持っていたって誰も凶器だとは思いやしないだろう?
当然、これに流れる電流なんて僅かなもんだし、それを食らったところでちょっと痺れるぐらいだろうしね。
でもね、違うんだよな。
「あ、が……?」
破落戸は僕の攻撃――行為に、目を丸くしていた。それと同時に何故自分がこうなっているのか、なんて思いもしないんだろうな。
破落戸は倒れて、痙攣していた。声も出せない。動くことも出来ない。蛞蝓に塩をかけたような、そんな感じでもがきあがき苦しんでいる。
そして、破落戸は――息絶えた。
呆気なく。
人間って――こんな簡単に死ぬんだな、と何度だってそう思う。
当然と言えば当然なのだけれど、人間は絶対こんな簡単に死ぬ訳がない。
僕が特殊な人間だから、出来るのであって。
気づけばこんな稼業に勤しんでいる訳だけれど。
……稼いでいないのだから、稼業というのも変な話か。
夜は、好きだ。
余計な物を見せないようにしてくれる。
余計な物を隠してくれる。
だから、僕は夜が好きだ。
暗い暗い暗い――夜が。
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