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プロローグ
夜は好きだ。
暗い世界が好きだ。
誰も居ない世界が好きだ。
そして誰も――僕も止められないから好きだ。
今日も僕は、誰も居ない夜の街を歩く。
正確には、疎らに人は歩いているのだけれど――これについては切り捨てる形とする。
酔っ払いに、ホストに、警察官――。
警察官が来るときは、流石に何処かに避難しておかないといけない。
これでも見た目からしたら、中学生ぐらいにしか見られない訳だし……間違っていないけれど。
見つからないようにコソコソ動き回るのは、嫌いではないし。
「まぁ、別に良いんだけれどね」
夜は嫌いじゃないし。
寧ろ好きだから。
何をしたって、隠れるし、見えないし、消えてしまうし。
だからこそ――夜は楽しいんだけれどね。
裏路地を歩いていると、一人の破落戸が僕に声を掛けてきた。
「よう、こんなところを彷徨いて……どうしたんだ? 少しは注意した方が良いんじゃねえのか?」
誰に注意すれば良いんだろうね?
きっとその言葉は――そっくりそのまま返すこととなるのだろうけれど。
僕は笑いながら、スタイラスペンを取り出す。
これが僕の自衛手段。
いや、或いは――攻撃手段になるのかな?
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