むっちゃ流行りの恋愛小説

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むっちゃ流行りの恋愛小説

「これっ、これっ、私! これぇぇぇぇぇ~~~」  突然叫びだしたフィルデリア・エーデル公爵令嬢は、むっちゃ流行りの恋愛小説(ちょっとエッチ)「転生ヒロインは、モフモフ畑で溺愛スローライフ!」を読んでいた。  その流行りの恋愛小説には、転生したヒロインに、その恋路を邪魔する王子様の婚約者、悪役令嬢が登場する。ついでに流行のモフモフも出てきて、極めつけは溺愛ヒーローとスローライフ。ずらっとパワーワードが並んでいて、売れないわけがない、というくらい飛ぶように売れていた。 (Side フィルデリア)  「転生モフ」あ、長かったから短くしちゃった! その小説には、私と重なる設定ばかり。学園にいるヒロインは庶民出身の貴族、キラキラの王太子殿下、次期宰相候補と言われる天才令息。そして極めつけは悪役令嬢!  私には、幼い頃からの婚約者がいる。金髪碧眼、容姿端麗、冷静沈着……四文字熟語が似合う、完璧なキラキラ王子様、アイザーク・クロスロード王太子殿下である。そう、私はズバリ悪役令嬢のポジション! 「サリー、サリー、私、悪役令嬢だから、卒業パーティーの日に殿下に婚約破棄されて、捨てられちゃう~!」  サリーはこの庶民の女子のベストセラーを貸してくれた、優秀な侍女である。ついでに私のうっふんの師匠だ。私が幼い頃から、面倒を見てくれている。 「フィルお嬢様、いったいどうされましたか? 悪役令嬢など、お心の清らかなお嬢様がそのようなことにはなりません」  私は今、貴族の子息・子女の通う王立学園に通っている。アイザーク王太子殿下も、同い年なので同じ学年にいる。もちろん、クラスも一緒。これまで、適切な距離を取りつつも、私は殿下の婚約者として、大切にされてきた。
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