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ブレイクタイム
「お疲れ様」
道木が会社の休憩スペースにある自動販売機の前でコーヒーを飲んでいると、花元が財布を片手に声をかけてきた。道木は「おー、お疲れ」と軽やかに手を上げて応える。
「もしかして外回りから帰ってきたところ?」
「ああ」
「どこ?」
「宇材部長のところ」
「え、本当に?」
花元は財布から出した小銭を握ったまま固まっている。
「なんだよ」
「いや、だって、あそこに行った後はいつも疲れた顔してるのに、今日は落ち着いてるように見えるから」
「そうか? 言われてみると、今日はそんなにイライラしてないかも」
「何か良いことでもあった?」
「別に。強いて言うならアレのお陰かもな」
「アレ?」
「お前がくれたゲーム」
飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に入れながら、道木は話し続けた。
「最初は変なゲームだなって思ってたけど、やればやるほど面白くてさ。それに、昔と違って画面が綺麗だし音楽もカッコいいし。早く帰ってゲームしたいって思うなんて小学生のとき以来かも」
「そっか、そんなに気に入ってくれたなら良かった」
「さてと、今日も定時で帰れるようにもうひと踏ん張りしてくるか」
「ああ、うん、頑張って」
「お前の弟にも礼を言っといてくれ」
道木は足取り軽くその場を後にした。
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