上司

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上司

「岩下課長、先日提出した書類は確認いただけたでしょうか」  道木は直属の上司である岩下に尋ねた。一週間前に書類が必要な理由と期限も添えて直接依頼をしたが、まだ返事をもらえていなかった。 「ああ、そんなのあったな」  岩下は悠々と新聞を広げて深く座っている。 「明日必要でして」 「明日ぁ? なんでそんなギリギリに言うんだよ」 「いや、それは……」 「言い訳は聞きたくない。俺だって忙しいんだぞ。ったく。で、どんな書類だ?」  岩下はごそごそと引き出しを漁り始める。 「マルカク商会の書類ですが……」 「これか。はああ、仕方ないから今から見てやるよ。終わったら呼ぶから。あ、マナミちゃーん、コーヒー淹れてくれない? 可愛い子が淹れたコーヒー飲みたいんだけど」  猫なで声で女性社員を呼びつける岩下に背を向け、道木は自分のデスクに戻った。するとそこへ、花元がそっと近寄る。 「あれ、結構前に課長に頼んでたやつだろ?」 「そうだな」 「ヒドイ話だよな」 「まぁ……」 「どうした?」 「いや、すまない。とりあえず問題ないから」  道木は穏やかに答えたが、その目はどこかギラギラしていた。
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