ブレーキ音が響く

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

ブレーキ音が響く

「ねえ、かくれんぼしようよ」 「いいよ」  いーち、にーい、さーん、しーい…… 「じゅう! もういーかーい!」  もーいいよー……  あの子はどこだろう?  ひとりぼっちであそんでいたボクに話しかけてくれた、せがひくい、たぶん年上のおとこの子。  こえは右の方からきこえてきた。たぶん、あの小さい木のうしろにかくれているとおもう。あそこにはお花がたくさんある。きれいだとおもうけど、なんとなくちかづきたくなかった。  でもあのへんにかくれてるなら行かなきゃ。 「あ」 「みーつけた」  小さい木にちかづいたらおとこの子のあかいふくが見えた。あんなにあかかったらだれでもわかる。おとこの子はかくれんぼがヘタクソだ。 「見つかっちゃった」 「つぎはボクがかくれるね」 「ううん。そろそろお迎えが来るよ」 「おむかえ?」 「ほら」  おとこの子がゆびさした先に女の人がいた。 「おかーさん!」  おとこの子とこえがかさなる。 「ねえ、いっしょに行こう」 「……」 「いこ?」 「うん」  うなずくとおとこの子はボクの手をにぎった。ボクの手は汗でぬるぬるしてるけど、おとこの子の手はもっとぬるぬるしてた。 「あら、ちょっと見ないうちに大きくなったわね。お兄ちゃんより大きいわよ」  おかーさんはあたまをなでてくれた。 「さあ、行きましょう」  ボクたちはおかーさんと手をつないでどうろをわたった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!